「花びらで描く桜島」 82歳ミヤギタケオさんが生み出した「ペタルアート」とは
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鹿児島県垂水市に住むミヤギタケオさん(82歳)が、花びらを使って絵を描く独自の技法「ペタルアート」を生み出して約50年。4月23日、鹿児島市のマルヤガーデンズで、最後となる第30回個展が幕を開けた。テーマは「Countless Thanks」——「たくさんのありがとう」。約90点が並ぶ会場には、ファンや知人が次々と駆けつけた。「ペタル(Petal)」とは英語で「花びら」を意味する。ミヤギさんが命名したこの技法では、乾燥させた本物の花びらを絵の具に見立て、一枚一枚を貼り合わせて絵を描く。
ミヤギさんの作品は、鹿児島を象徴する桜島が多い。稜線はノウゼンカズラの花びらで、噴煙はバラの花びらで表現されており、使用した花びらの枚数は約300枚。色や形だけでなく、花びらのシワや折れさえも、作品を構成する大切な要素だという。
「隣に何を持ってくるか、形をどうするかというので、自分も楽しみながら出来上がった作品にドラマが見えてくると思う。そのあたりが面白さに見えてくる要素」とミヤギさんは語る。
若い頃、ミヤギさんは鹿児島三越に勤務していた。しかしデザイン業界への憧れは断ち切れず、32歳で退職し上京。2年間、デザイン学校へ通った。
「クラスが18歳なんですよ。一回り違う子供たち。私はもう子供がいたから、父っつあんて呼ばれて」
そんな学校生活の中で出された課題が、ミヤギさんの人生を変える。「花を使って表現をする」というテーマに向き合ったとき、彼は一つの発見をした。
「マーガレットの花をむしってみたら、鳥の羽に似てると思ったんです。つるバラの赤紫が飛んでるハトだったら何かできるかもしれないと」
ペタルアート誕生の瞬間だった。
技法の核心は、花びらの乾燥にある。その方法は意外なほどシンプルで、漫画本に花びらを挟む。「マンガ本のザラ感が一番適している」と宮城さんは言う。乾燥期間は少なくとも5年、多くは数十年に及ぶ。
「隣近所に言って『子供さんが読んだあと下さい』と」
現在自宅にある漫画本は、2000冊を超える。作品一枚の裏には、気の遠くなるような準備と時間が積み重なっている。
1996年から毎年、個展という形で作品を発表してきたミヤギさん。当初は自身が勤めていた鹿児島三越で開催し、2009年には閉店前の三越で最後の個展を開いた。
2011年には、ポストカードの売り上げを東日本大震災の被災地へ送った。コロナ禍で多くのイベントが自粛を余儀なくされた2022年も、個展を続けて人々に癒やしの風景を届けた。
そして2026年、83歳を迎える年に、ミヤギさんは決断を下した。
「今年の11月で83歳になるのもありまして、一番良い状態で皆さんに作品を見て頂くのは30年を境にしていい機会かと」
4月23日に始まった第30回個展。会場には作品を購入したファンや知人の姿があふれ、温かな空気に包まれた。
「自然の草花がこんなにいろんな種類の色を出せる。この素晴らしさを先生が引き出していらっしゃる」と、作品を購入した来場者は話した。
ミヤギさん自身は、感傷的な様子を見せなかった。
「嬉しい。これでやりきったと感覚は充分あるので感傷的な面はありません」
個展は最後となるが、宮城さんのアーティスト人生は続く。今後は自宅アトリエでペタルアート体験を開いたり、依頼があれば作品を制作したりする予定だという。
「アート探しの旅、これからも続けます」
安定した生活を手放し、花びら一枚一枚に情熱を注いで30年。垂水市から鹿児島県民を魅了し続けたミヤギタケオさんの歩みは、静かに、しかし力強く、次の章へと向かっている。
宮城タケオさんの個展は4月29日(火・祝)まで、鹿児島市のマルヤガーデンズで開催中。作品は全て購入可能となっている。