鹿児島県 黒岩神奈川県知事 24年ぶり来島し講演 「命が輝く時代の原点は徳之島に…」 未病・障がい福祉改革への思い語る
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【徳之島】神奈川県知事の黒岩祐治氏(71)の講演会(医療法人徳洲会グループ主催)が23日午後、徳之島町生涯学習センターであった。演題は同県政運営の基本理念・最重要キーワードでもある「Ⅴibrant INOCHI(いのち輝く)」。自身の原点となった救急医療キャンペーンから現在推進する「未病改善」政策や障がい者福祉改革に至るまで、一貫して掲げてきたその理念を語り、「障がいの有無に関係なく、全ての命が輝く社会の実現」を訴えた。徳之島3町の町長や副町長、医療・福祉関係者、一般住民など約200人が来場。徳洲会の東上震一理事長は冒頭あいさつで、同グループ最大の病院(湘南鎌倉総合病院)と神奈川県行政の指導など長年のつながり、黒岩知事が目指す未病・予防医学などとの連携。また故徳田虎雄元理事長が掲げてきた「ヘルシーリゾートアイランド」構想の一環――と講演目的を示した。
黒岩氏は講演の冒頭、24年前の来島時は「政治的対立の影響で道路整備がまだら模様だったが、今は美しくつながり時代の変化を感じた」とユーモアも交えた。鹿児島市出身の父親が若い頃に海難事故で遭難した際、救助したのが徳之島の人々だった。徳洲会創設者の徳田虎雄氏とも親交があり、2011年には対談もするなど「深い縁」を強調する。
フジテレビキャスター時代には、「車内に医療があれば助かる命がある」として救急医療キャンペーンを展開。日本医師会などの反対を受けながらも、2年間で100回以上報道を続け、1991年の救急救命士制度創設につなげた経緯も振り返った。
さらに、105歳まで現役医師として活動した日野原重明氏との交流にも触れ、ミュージカル「葉っぱのフレディ」の制作を通じて、「命の循環」を考えるようになったと語った。
2011年の神奈川県知事選への出馬(現在4期目)については、「920万人の命を預かる仕事だと感じた」と述懐。「いのち輝く神奈川」を掲げ、超高齢社会に対応する「ヘルスケア・ニューフロンティア」政策を推進してきた。
そしてその中心となる「未病」の概念については「健康と病気を二分するのではなくて、連続的な状態(グラデーション)として捉える考え方」と説明。食事、運動、社会参加の3要素を重視し、「日々の暮らしの中で健康側へ戻していくことが大切」と強調した。
背景には、肝臓がんで余命宣告を受けた父親が、漢方医の助言で蒸した長芋を食べ続けた結果、体力を維持しながら2年半生き延びた経験も紹介。
具体例として、横浜市の若葉台団地では多世代交流や地域コミュニティーづくりを進めた結果、高齢化が進む中でも15年間にわたり要介護認定率が増加していないことを紹介。「医療以上に、つながりや生きがいが健康を支える」と述べた。
また、声の波形から心身状態を分析する技術や、WHO、東京大学と共同開発した「未病指標」アプリなど先端技術を活用した取り組みも紹介した。
一方、16年の相模原市の津久井やまゆり園事件への対応については、「県政で最大の挫折だった」と振り返った。当初は全面建て替え方針を進めたものの、家族や関係者から「福祉の逆行」と反発を受け、方針転換した経緯を説明。「管理目線で動いていた自分を猛省した」とも。
その後、障がい当事者を交えた議論を重ね、日本初となる「当事者目線の障害福祉推進条例」を制定。障がい者本人にも分かりやすい表現で権利保障などを盛り込み、県議会で全会一致可決されたことを紹介した。
さらに、県立施設で医療体制が不十分だった実態にも言及し、「福祉の科学化」を掲げて26年4月に「県立福祉機構」を発足させたと説明。当事者研究やデータ分析を通じ、ケアの質向上を目指す考えを示した。
最後に黒岩氏は、「医療、福祉、食、農業、環境は全てつながっている」と述べ、「病気や障がいの有無にかかわらず、100歳になっても笑顔で生きがいを持てる社会をつくりたい」と強調。
その上で、「障がいの有無に関係なく、全ての命が輝く時代の原点は徳之島にある」と語り、講演を締めくくった。