鹿児島県 回復力 ㊤ 世界自然遺産5年 数、行動や生態も調査 希少種保護増殖事業 全国初の完了
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奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島が世界自然遺産に登録されて今月26日で5年を迎える。奄美大島と徳之島は、アマミノクロウサギに代表される希少種を含む多様な生物が生息・生育していることが評価されたものの、こうした希少種のロードキル(交通事故死)の増加は課題として横たわったままだ。一方で奄美の自然の回復力、力強さが2種の鳥類によって示された。複雑に絡み合った生態系の中で固有の動植物を守っていくには、外来種の駆除が「最も効果的」であることを印象付けたとの見方がある。6月30日。環境省は奄美市名瀬のアマホームPLAZAで会見を開いた。同省は奄美大島と加計呂麻島、徳之島で希少野生生物保護増殖事業を実施しているが、アマミヤマシギとオオトラツグミの事業完了を宣言した。同省沖縄奄美自然環境事務所の大林圭司所長は「保護増殖事業は79種・亜種で58の計画(2026年6月現在)が行われているが、全国で初めて事業完了を報告できたことを誇らしく思う。奄美の素晴らしい自然環境や、これまでの取り組みの成果を全国に発信していきたい」と述べた。この2種のほか奄美ではクロウサギも同事業の対象(04年に計画策定)となっている。クロウサギについては引き続き事業(生息状況把握のためのモニタリングや繁殖生態に関する調査、ロードキル防止対策など)に取り組む。
2種の保護増殖事業完了会見に同席した団体がいる。NPO法人奄美野鳥の会(永井弓子会長)だ。会見の場では同事業との関わりについてオオトラツグミは永井会長(51)、アマミヤマシギは鳥飼久裕前会長(66)が説明にあたった。
▽「分からない」から出発
アマミヤマシギは奄美大島より南の沖縄島までの島々で観察記録があるが、オオトラツグミは奄美大島のみに生息する。同省はこの2種の保護増殖計画を1999年に策定した。クロウサギに比べるとかなり早い。鳥飼さんは「環境省はそれぐらい、この2種を注目していたのではないか。だが、現実的には分からないことばかり。アマミヤマシギは誰も研究していなかった。オオトラツグミは奄美野鳥の会として94年から一斉調査に取り組んだが、個体数が少ないことしか分からなかった。奄美野生生物保護センターの当時の所長から相談を受け、とにかく基礎調査(研究)をしようとなった」と振り返った。
2種とも「ほぼほぼ何も分かっていない状態」、ゼロからの出発だ。環境省と委託を受けた野鳥の会によると調査は、アマミヤマシギは▽夜間ルートセンサス調査(分布や個体数の変化の把握)▽標識や発信機装着による行動圏調査▽繁殖期の情報収集▽渡りの調査――などが進められた。
アマミヤマシギが人と遭遇する機会が多いのは夜間の林道ぐらい。調査は夜間に行われ、行動や生態を調べるため捕獲し、足輪や発信機を取り付けた。同省の報告によると02~18年までに704個体に標識を付け、うち約4割程度が再捕獲された。「捕まえては足輪や発信機を付ける。そうした調査をずっと積み重ねた」。14、5年もかけたという。この行動生態調査以外に「今も続けている」というのが生息数の調査だ。奄美大島、徳之島、加計呂麻島の3島で実施しており、「行ける林道は全て回って数をカウント」、それにより現状の把握に役立てている。
▽明らかになった生態
ミミズなどの土壌動物を採餌するため、歩いている姿が目撃されるように地上にいることが多いアマミヤマシギ。夜間に遭遇することから「夜行性だろう」と認識されてきたが、発信機を付けたことで違うことが判明。鳥飼さんは説明する。「昼間も普通に動いている。林道ではなく森の中で移動していることから人と遭遇しない。そのため夜行性と判断された。餌の取りやすさがあるのだろう。夜になると森の中は暗いため、もう少し明るいほう、オープンスペースがある林道へと移動する。夜でも真っ暗は嫌がる。月明りに関しては新月の夜よりも満月の夜のほうが林道に出てくる」。こうしたことが分かったことで、いつどこに行けば遭遇するか判断できるようになったという。
2~6月頃が繁殖期、産卵数は2~5個(3個が標準)、生まれたひなは親鳥がひと月超連れて歩くことも分かった。
移動については意外な事実が明らかになる。近くの林を中心に「生まれた所からあまり移動しない」とされている。行動範囲の狭さが特性とも言えるが、その一方で冬場は沖縄島でも確認されている。「夏は観察されていないのに…なぜ冬だけ。その謎、不思議さに迫りたい」。奄美野鳥の会では環境省の委託調査とは別に、サントリー世界愛鳥基金の助成金を受けて公益財団法人日本鳥類保護連盟と共に沖縄での調査に乗り出した。