回復力 ㊦ 世界自然遺産5年 最も効果的な保護対策「外来種駆除」 2種、地元との関連性アピールへ 鹿児島県
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オオトラツグミの一斉調査は今年の場合、3月22日に行われた。島内外のボランティア参加者75人がさえずりを聞き取り、115羽の生息数を確認した。過去最多の2024年(117羽)に次ぐ数だ。「過去10年、天候不良など調査環境による増減は見られるが、生息数は安定傾向」(奄美野鳥の会見解)。継続してきた2種のモニタリングから「確実に増えている」と判断され、これが全国で初となる保護増殖事業の完了に結び付いた。同事業のオオトラツグミに関しては、前任者から引き継ぎ生態調査を担当している環境省の奄美群島国立公園管理事務所・希少種保護増殖等専門員の鈴木真理子さん(44)は「奄美野鳥の会がいなければ(事業の完了は)できなかった。モニタリング調査のほか、アマミヤマシギについて生態調査も担当していただき、調査研究によりさまざまなことが分かってきた。専門的な自然保護団体の存在は奄美にとってとても大きい」と語った。
▽外来種駆除の重要性
鳥飼さんは語る。「事業が完了したが、2種に対し我々がひたすら取り組んだのは基礎調査・基礎研究。積極的に保護対策を進めたかと言えば一切やっていない。個々に何かをやったから増えたというのとは調査内容の面で異なる」。特別天然記念物、国内希少野生動植物種に指定されている絶滅危惧種のアホウドリの場合、調査・研究だけでなく営巣地の整備など保護活動が行われているが、こうした保護対策には取り組んでいないという。
では、なぜ増えたのか。「24年に根絶が宣言されたマングースの駆除、森林の回復が大きい。在来種の保護対策で最も効果的なのはマングースの根絶によって示されたように外来種駆除ということが今回分かったのではないか」(鳥飼さん)。ただしマングースのような在来種の脅威となる肉食哺乳類の存在がなくなったわけではない。適切な飼養が行われない結果が問題を引き起こすノネコ(野生化した猫)対策は引き続き進められている。マングース、ノネコ、さらにノヤギなど外来種の存在は軽率とも言える人為的な行為が根底にあるだけに、駆除の重要性と同時に生態系に与える影響を常に自覚していきたい。
「何を食べているのか、いつの時期にどんな所で繁殖しているのか――など2種については、これまでの調査研究により膨大なデータが集積されている。それによって今後2種に対し、何らかの危機が起きたとしても個々に手が打てる。個体数の回復だけでなく、これも大きな成果ではないか」。鳥飼さんは強調した。
▽唯一の「アマミ」
今年3月、同省は第5次レッドリストを発表した。6年ぶり改訂の対象となったのは鳥類、爬虫類、両生類だ。奄美群島に生息する生物ではアマミヤマシギとオオトラツグミ、オキナワキノボリトカゲが絶滅危惧Ⅱ類から準絶滅危惧へ1段階引き下げられ、絶滅危惧種から外れた。
保護増殖事業が完了したことで2種は国内希少種からも外れる見込み。このランクダウンによりオオトラツグミは国の天然記念物(文化財)という肩書は残るものの、アマミヤマシギは国や鹿児島県の天然記念物ではなく、沖縄県以外は何の肩書もない普通の鳥になる。「現実問題として鳥は捕まえることができないのだから、その段階で守られていると言える。普通の鳥となったアマミヤマシギ。それ自体悪いことではないと思っている。数が増えているということの証なのだから」(鳥飼さん)。
世界自然遺産としての登録で評価されたように多様性を誇る奄美には、この島だけにしか生息しない固有種の鳥がたくさん存在する。観光客などに知られているのは見た目が美しいルリカケス(鹿児島県の県鳥)や、さえずりが美しいアカヒゲだろうか。豪快なドラミングの音を響かせるオーストンオオアカゲラも人気だ。こうした固有種の中で生息地を示す奄美を名前にしているのはアマミヤマシギのみ。
「固有種で唯一、奄美が付いている。これは誇るべきことではないか。もっと知られるべきであり、まず島民の皆さんに気付いてほしい。それによって愛着を持って見守ってもらえれば。また、オオトラツグミは奄美の伝統産業であるオオシマツムギ(大島紬)と語感が似ている。2種ともまだまだ知名度が低いだけに、地元との関連性により、知ってもらうことに力を入れたい」。鳥飼さんによると、野鳥の会では2種の知名度向上へ今秋にもイベント開催に取り組むという。専門的なシンポジウムだけでなく、参加者に興味・関心を持ってもらえるような「楽しいイベント」を思案中だ。
個体数の回復という自然の力強さを示した2種。世界自然遺産登録5年の節目に保護増殖の在り方、道筋を記したと言えるだろう。この事実が広く認識されることで環境省、そして奄美野鳥の会の功績はより輝く。