天城町当部 集落主催お話し会・観察会 「クロウサギの里」で共生学ぶ 集落・クロウサギ「10個のお願い」も発信 鹿児島県
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【鹿児島県・徳之島】天城町当部集落(太田照久区長)はこのほど、「アマミノクロウサギお話し会・観察会」を開催し、親子連れなど約30人が参加した。世界自然遺産の島の生物多様性の価値を支えるアマミノクロウサギの生態や保護の重要性を学ぶとともに、夜間観察を通して人と野生動物が共生する地域づくりへの理解を求めた。世界自然遺産の島・徳之島のほぼ中央部に位置する当部集落は、国指定特別天然記念物アマミノクロウサギが民家周辺にも姿を見せる「クロウサギの里」として知られる。集落主催の今回の催しは、交流人口の拡大とともに、世界自然遺産登録後の課題の一つロードキル(交通事故死)防止や保護活動への理解促進を目的に、奄美群島広域事務組合の世界自然遺産基金活用事業として実施した。
先だったお話し会は、当部集落の観光拠点施設「茶処あがりまた」で。講師は、水産庁職員時代に南極海の海洋生物を調査研究し、同集落に移住した4年前からクロウサギの調査研究を続ける林倫成さん(53)が担当。定点カメラで撮影した写真や映像を紹介しながら、巣穴での親子の様子や子どもを守る母ウサギの行動など、「トウベノクロウサギ」の生態を解説。ハブが子ウサギを狙う映像では、子どもたちから「あぶない」「早く隠れて」と声が上がり、参加者は命の営みに見入っていた。
写真展については来年春まで継続される。
続いて、天城町企画財政課の吉野琢哉さん(35)が、『当部集落とトウベノクロウサギから10個のお願い』を発表。ガバメントクラウドファンディング事業を通じて、当部住民と町が協議を重ねて配布用チラシにもまとめた。〝当部集落とクロウサギの共同声明〟として「夜10時までの観察」「集落内では静かに歩く」「夜間は時速20㌔以下で走行する」「私有地に立ち入らない」「ごみは持ち帰る」など観察マナーと保全への協力を呼び掛ける内容。
併せてロードキル防止を目的とした『トウベノクロウサギここでよく出会えるよ』マップも発表した。近く町公式ホームページなどでも公開する。
休憩時間には、地元在住のフレンチシェフ手作りのパウンドケーキや「京大卒Iターンカップル」でおなじみの太田区長・はるかさん夫妻が手掛ける「かえる農園」産のパッションフルーツジュースが振る舞われ、夜の観察会へと出発した。
観察会では、赤外線カメラを使ってクロウサギを探し、一つのライトを参加者全員で共有する「クロウサギにやさしい観察方法」を実践。川辺のホタルやイボイモリなど夜の自然も観察しながら、約800メートルの「トウベノクロウサギ観察ロード」を散策した。
終盤には全員でライトを消して暗闇を体験した後、強い光を照射し、車のハイビームなどを浴びて体を硬直させてしまう〝クロウサギの立場〟を疑似体験。光が野生動物に与える影響や、ロードキルが発生する仕組みへの理解を深めた。
参加した「にしあぎな学園」9年(中学3年)の太田ななみさんは「島外でも徳之島や当部のクロウサギについて自信を持って話せる知識を楽しく学べた。農業被害も含め、多くの人が共生について考える機会が大切。また参加したい」と話した。
オブザーバー参加していた環境省徳之島管理官事務所の大谷慧管理官(31)=8月1日付異動内定=は、当部集落の自主的取り組みに注目。「丁寧な解説によって、参加者がクロウサギに配慮しながら観察する意識を持っていた。光が与える影響も実感でき、地域の自然やクロウサギへの思いを知ることで、適切な保護や訪れ方につながると思う」と話し、継続的な取り組みに期待を寄せていた。
今年は世界自然遺産登録5周年、来年は奄美群島国立公園指定10周年の年。集落を挙げた自主的な保護・共生取り組みのモデルケースとして関心を集めそうだ。