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ペーパーレス化、原材料費高騰、人材難…三重苦の鹿児島県内印刷業界――10年で56社から38社へ、「明日はわが身」
ビジネス 南日本新聞 👁 3

ペーパーレス化、原材料費高騰、人材難…三重苦の鹿児島県内印刷業界――10年で56社から38社へ、「明日はわが身」

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 鹿児島県内の印刷業界が苦境にあえいでいる。ペーパーレス化の進展による需要減少に原材料費の高騰が追い打ちをかけ、人材難にも直面する。「このままでは倒産する」。事業者からはため息が漏れる。

 4月上旬、印刷業界に衝撃が走った。1959年設立の浜島印刷(鹿児島市)が3月末で事業を停止し、破産する意向が明らかになった。

 信用調査会社の東京経済鹿児島支社によると、負債総額約3億9000万円は、この10年の印刷業界では最大。出版不況などで赤字が膨らみ、破産準備をしながら別会社に事業を引き継いだ。最盛期に売上高4億円を超えていた老舗の決断に、同業者は「明日はわが身」と身構える。

 同支社の調べでは、2016年~26年3月に県内7社が倒産に追い込まれた。零細企業が多く、理由の大半は売り上げ不振。印刷会社が加盟する県印刷工業組合によると、組合員は10年間で56社から38社に減った。後継者不足による廃業も後を絶たない。

 業績の悪化に拍車をかけているのが原材料費の高騰だ。広告チラシなどを手がける新生社ホールディングス(鹿児島市)の岡崎洋人社長(60)は「物価高の影響で10年前と比べ約6割上がった」と話す。

 この数カ月は新聞やテレビとにらめっこの日々が続く。原油由来のインクやコーティング剤はイラン情勢が価格に直結する。2月に仕入れ先から5%値上げの打診を受けたといい、「簡単にはのめない」と交渉を続けるものの、「原油高がさらに進めば受け入れるしかないだろう」とこぼす。

 「印刷物はあって当たり前という空気が顧客の間にある。値上げに応じてもらえない事も多い」と岡崎社長。価格転嫁は容易ではなく、仕入れ先、顧客との板挟みに悩む。

 印刷以外に活路を見いだした会社もある。

 1918年に和田印刷として設立、創業100年を超えるプロゴワス(鹿児島市)は長年、伝票などを手がけてきた。2013年の社名変更とともに、新事業に乗り出した。

 顧客データを扱ってきたノウハウを生かし、データ活用方法やマーケティングプランの提案など企業の課題解決事業に着手。厳しい環境下でも業績を維持している。和田秀一郎社長(59)は「印刷だけしていれば間違いなく右肩下がり。情報をどのように提供するかが大切だ」と多角化によって生き残りをかける。

 とはいえ、業界では人材難が続き、新事業へのハードルは高いのも事実。印刷工業組合は「ペーパーレス社会であっても紙は必需品。魅力を伝え、人材を確保していきたい」としている。