鹿児島県 廣島員代さん『大主の願い』出版 102歳、徳之島の記憶を作品に 「島の魅力、世界に発信したい」
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【徳之島】102歳の私が、一番伝えたかった、祈りと希望の物語――。伊仙町木之香出身で、満102歳を迎えた廣島員代(ひろしま・かずよ)さんの小説や短歌などを収めた作品集『大主(ふうしゅ)の願い』の出版祝賀会が20日、町内の高齢者施設であった。金色のちゃんちゃんこ姿の廣島さんは、笑顔もひと際輝かせながら祝福を受け、「島の歴史や魅力を次は世界に向けて発信したい」と次なる目標を語った。廣島さんは1924(大正13)年2月8日、同町木之香生まれ。旧満州国(現中国東北部)の税務局に勤務中、敗戦を迎えた。九死に一生を得て帰国した後も、米軍統治下、祖国分離下の古里で様々な苦難を経験。戦争に翻弄(ほんろう)されながらも、学びと挑戦を続け、100年超の人生をかくしゃくと歩んできた。
作品集『大主の願い』はA5判、126ページ。非売品で初版は親族や関係者配布用の200冊。表紙には、廣島さんが十数年前、奈良県の知人からソメイヨシノの苗木を取り寄せて植えた木之香集落の桜並木通りの満開の写真を使った。
収録作品は、80代から通った小説教室で学びながら、古里・徳之島を題材に自らの体験もアウトラインに盛り込んだフィクション小説『大主の願い』と『結(ゆ)いの花』の2編。また、「年輪を重ね重ねていつしかに百年(ももとせ)ならむ夢のごとし」と詠んだ一首もなど、短歌教室で研さんを重ねた作品から16首を厳選して紹介している。
出版のきっかけとなったのは、伊仙町誌編纂(へんさん)室が約10年前に行った90歳超長寿者への聞き取り調査と、2年前の「いせん寺子屋」講座講師に「百歳の語り部」の廣島さんを招いたことだった。
戦中・戦後の体験に触れた同室の松岡由紀室長が「次代の苦難をものともせず、ピンチのたびに持ち前の知恵と胆力で乗り越えた徳之島生まれの女性が紡ぐ小説を通じ、手に取った方の心に島の心や暮らしの様子を届けたい」。廣島さんの小説を通じて島の歴史や暮らしを次世代に伝えたいと、私的な編纂協力を提案したことだった。
この思いに廣島さんの親族らも賛同。代表を務める浜口正仁さんらが「島で解き放たれたおばの感性を積み上げた102歳の人生の歩みそのものが、原寸大で反映される」と発行人となり、作品集の刊行が実現。松岡室長は「戦中・戦後の混乱期における個人や家族の苦悩、歴史がフィクションを通じて描き出されている」と意義を語る。
祝賀会は、廣島さんが約1年前から利用している同町犬田布のヘルスネット徳洲会「グループホームみさき」(里村貴子管理者)の家族会・敬老会と合わせて開催。廣島さんは金色のちゃんちゃんこ姿で紙吹雪と拍手に迎えられ、会場を笑顔で包んだ。その心境の一首「ゆめならぬみさきハウスの朝夕はうき世はなれたうつつの世界」も披露して拍手を浴びた。
現在も廣島さんは短歌や絵の制作に意欲的に取り組んでいる。里村管理者によると、「毎日とても意欲的に短歌や絵の制作に取り組んでいる。自身の作品を海外にも届けたいという夢や、100歳から始めた手習いにさらに磨きをかけたいという強い思いを持っている。これからも元気で笑顔で過ごしてもらえるよう、スタッフ一同も学びながらサポートしていきたい」と話す。
100年を超えて培った記憶と創作を一冊に刻んだ廣島さん。徳之島への愛と新たな挑戦への思いは、102歳の今も衰えることなく、次代、そして世界へ向けて広がっている。